研究の紹介

ここでは簡単に研究を紹介します

●諫早湾における貧酸素水塊の形成機構

●有明海奥部における潮流の経年変化

●有明海奥部における河川出水に伴う水質変化

●数値生態系モデルによる有明海貧酸素水塊の再現計算


●諫早湾における貧酸素水塊の形成機構

諫早湾において発生する貧酸素水塊の形成機構を明らかに
するため、週二回の頻度で現地に出向き、調査を行いました.
その結果、DO濃度の変動の様子や二つの貧酸素水塊形成機構
が存在することが明らかになりました.(詳しくは参考文献1)

図1:調査地点(コンターは水深)
図2:調査風景
図3:海底直上50cmの溶存酸素(DO)分布[mg/l]

図1

図2

図3


●有明海奥部における潮流の経年変化

有明海奥部においては赤潮の増加,夏季の貧酸素水塊の発生など,多くの環境異変が明らかとなっている.
こうした異変の原因の一つとして,流れの変化が指摘されている.特に1997年に諫早湾に建設された潮受け堤防との
関連が注目されており,流れが経年的にどう変化してきたかを評価することは環境異変の解明にとって重要である.
そこで本研究では佐賀大学農学部浅海干潟総合実験施設が経年的に観測してきたデータを用いて潮流の経年変動
を調べた.(佐賀大学に勤務していた時の仕事です)
その結果、潮流は年々の変動が大きく、一定の経年変動は検出されませんでした.また、潮受け堤防建設に伴う変化
も検出されませんでした.その他に、ノリ養殖に伴う流動の減衰はかなり大きなものであること、1995年から1996年
にかけて流向が変化したことなど、多くのことが明らかとなりました.(詳しくは参考文献2)

図4:現在のタワー写真およびタワー位置(コンター線は水深、青い部分はノリ養殖海域)
図5:主太陰半日周潮流の調和解析結果

図4

図5


●有明海奥部における河川出水に伴う水質変化

夏季に有明海奥部では毎年のように赤潮と貧酸素水塊が発生しており、有明海奥部に流入する河川の増水と密接に
関連している.そこで出水に伴う河川水の挙動やそれに伴う水質変化を明らかにするため、毎月大潮時に実施されてい
る浅海定線調査資料を解析した.
その結果、河川水は有明海奥部に流入後、岸を右に見つつ伝搬していくこと、出水が長期に渡ると徐々に奥部全域に
広がること、底層のDO濃度はこうした長期の出水時に低下することなど、出水に伴う水質の大きな変化が明らかとなった.
(詳しくは参考文献3)

図6:浅海定線調査観測点図(点線は水深)
図7:出水に伴う表層塩分の変化
   (塩分20以下はトーンをつけている)

図6

図7


●数値生態系モデルによる有明海貧酸素水塊の再現計算

有明海奥部および諫早湾で発生している貧酸素水塊の発生には、物理・化学・生物過程が複雑に影響している.
そのため,発生のメカニズム解明には数値生態系モデルが有効な手法と考えられる.本研究では,FVCOMをベース
とした現在構築中の生態系モデルを有明海に適用し,有明海奥部および諫早湾における貧酸素水塊の再現性に
ついて評価した.計算の高速化のためにMPI(Message Passing Interface)を使用した並列計算を行った.
その結果、DO濃度の大潮小潮変動や底層DO濃度分布について定性的に再現することが出来た.
まだまだ改良していかなければいけないが…(詳しくは参考文献4)

図8:計算領域と非構造格子
図9:並列計算で用いた領域分割(左:8領域,右:128領域に分割)
図10:生態系モデル、各変数および各フロー定義
図11:計算された有明海奥部の底層DO濃度分布[mg/l]

図8

図9

図10

図11