海面高度計と漂流ブイから求めた流速変動の比較

鈴木 郁元

 海面高度計のデータから求められた力学的海面高度(以下,SSDHと呼ぶ)場から,地衡流計算して求められる海面での流速変動と,漂流ブイの移動流速について,海域別の比較,検証を行った.潮流や慣性振動などの短周期成分を除去するために漂流ブイのデータから求めた流速成分には20°N以北では72時間,以南では240時間のガウス・フィルターを施した.また統計的な比較をする際に海面高度計のデータから流速変動を求める時には前後の期間を使用することにより時間内挿を施すという処理を施した後,両者を比較した.結果,北太平洋の3つの領域,すなわち北東領域(20°N以北,180°E以東),黒潮および黒潮続流域(20°N以北,180°E以西),低緯度域(20°N以南)において,次のようなことが分かった.まず,北東域では,流速の絶対値が小さく,両者の相関は低かった.黒潮および黒潮続流域では,流速の絶対値が大きく両者の相関は高かった.特に海面高度計の空間分解能(約150 km)を上回る中規模擾乱は,海面高度計によってかなり正確に捉えられていることが確認された.低緯度域では,コリオリ係数がちいさくてSSDT場から地衡流速を求める際にSSDTの少しの誤差が流速の大きな誤差をもたらすという問題があるが,東西成分に関しては相関は非常に高かった.一方,南北成分の相関は非常に悪かった.また,両者の定量的な比較において,中・高緯度(30°N以上)においては東西成分,南北成分共に10 cm/s程度の,また,低緯度域(20°N以下)においては東西成分で30 cm/s,南北成分で40 cm/s程度の誤差があることが確認された.

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