四国沖の黒潮の流量と熱流量の評価

内田 裕

 四国沖の足摺岬から南南東に延びる測線において,1993年11月から1994年8月までの係留流速計観測と13回のCTD/XBT観測によるデータを組み合わせて,1000 m以浅の黒潮の流量と熱流量を絶対値として評価した.また,そこから得られた結果と,海面高度計を搭載した人工衛星TOPEX/POSEIDON(T/P)のデータから,1992年9月から1994年11月までの黒潮の流量の時間変化を推定した.

 絶対値として求めた黒潮の流量は,32〜90 Svの範囲で大きく変化している.13回の推定値の平均は60 Svである.また,黒潮の流量と黒潮の摂氏零度を基準とした熱流量の間には相関係数が0.99という非常に高い相関がある.また,黒潮の流量と黒潮を挟む海面力学高度(SSDT)の差の間には相関係数が0.95という高い相関がある.

 現場観測によるSSDTと,T/Pから得られるSSDTの2年間の平均からの偏差である時間変動成分を組み合わせて,SSDTの平均場を推定した.SSDTの平均場にT/PによるSSDTの時間変動成分を加えて,二年間にわたる10日毎のSSDTの時系列を得た.SSDTの時系列から,黒潮の流量と黒潮を挟むSSDTの差の関係を用いて,黒潮の流量の時間変化を推定した.推定した黒潮の流量は22〜92 Svと大きく変動している.71回の推定値の平均は55 Svである.1992年9月から1994年11月までの黒潮の流量の変動は,年周期よりも半年周期の変動が卓越している.

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