台湾暖流と対馬暖流の流量変動の相関性

山田 和史

 東シナ海の流速変動を考える上で、台湾暖流と対馬暖流の流量変動は重要な要因である。水質分析や数値モデルなどから、両暖流が接続しているという説も提唱されているが、長期間の観測データに基づいて調べられた例はまだない。そこで本研究では、九大応力研が行っている対馬暖流の長期間の断面観測データと、衛星海面高度計から求めた台湾暖流の表面流量を用い、台湾暖流と対馬暖流の流量変動の相関性について調べた。 季節内変動(数ヵ月の周期帯)と経年変動(400日以上の周期帯)の2つの周期帯に分け、両暖流の流量変動に対し時間ラグ付の相関解析を行った結果、季節内変動では両暖流間に有意な相関は見られなかった。さらに、両暖流の接続に季節依存性がある可能性(Isobe,1999)などを考慮し、季節や流量などの条件で期間を区切り相関解析を行ったが、それでも両者に有意な相関は見られなかった。一方、経年変動では両暖流間に有意な負の同時相関が見られた。周辺海域の海面高度偏差と両暖流の流量変動の相関を調べたところ、黒潮流域に沿って有意な相関が見られ、台湾暖流と黒潮の流量は正相関、対馬暖流と黒潮の流量は負の相関があることがわかった。さらに九州沿岸の水位の経年変動との相関を調べたところ、黒潮流量が増加(減少)すると九州全域の水位が下がって(上がって)いた。こうして九州北岸の水位が下がる(上がる)結果、対馬暖流の流量が減少(増加)することが示唆された。

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