研究内容

宇宙プラズマ中の乱流・非線形波動

自然界ではさまざまな波動や乱流が観測されますが、宇宙プラズマ中の波動や乱流の特徴は非線形性がとても強いことです。極端な非線形波動や乱流がなぜ励起され、どのように発展していくのかを理解することは、背景の宇宙プラズマや高エネルギー粒子の振る舞いの理解に直結するためたいへん重要です。理論、モデリング、計算機シミュレーション、さらには機械学習を用いた人工衛星データの解析を通じて、宇宙プラズマ中の非線形波動や乱流の起源、その基本的性質の解明を目指しています。


MHD乱流の長時間発展

太陽風中ではしばしば特徴的な磁場構造/波形が見られます。こうした構造や波形は太陽風乱流中の高い非線形性やコヒーレンスが原因となって形成されると考えられています。非線形性やコヒーレンスがどのようにして生まれるのか、またそれらが高エネルギー粒子の加速や拡散、プラズマの加熱にどのような影響を与えているのかについて、さまざまな理論的手法および数値シミュレーションを用いて研究しています。下の図はアルフベンソリトンの相互作用に関する数値シミュレーションの例を示しています。波動間相互作用により初期に与えた雑音が増幅されていくつかのソリトンが生まれ、これらが互いに衝突を繰り返しながら伝搬していく様子が再現されています。  アルフヴェンソリトンの相互作用

機械学習を用いた衛星観測データ解析

機械学習はパターンを見つけたり予測を立てたりするのに用いられる手法で、近年衛星データの解析にも広く用いられています。機械学習により、人間の目では判別が難しいような特徴を抽出したり、限られた衛星観測点データから高時空間解像度なデータを予測したりして、地球周辺のプラズマ環境を詳細に調べています。下の図は磁気圏衝撃波の上流で観測されるショックレットと呼ばれる非線形波動の構造を自動識別するための機械学習の例です。衛星で観測された大振幅な磁場波形を基にその特徴量を自動抽出して、その構造がショックレットなのか、そうでないのかを判別しています。その他にも衛星観測データから高時空間解像度でプラズマパラメータを予測する研究も行っています。