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大振幅磁気流体波動による荷電粒子の加熱と加速

 大振幅磁気流体波動による荷電粒子の加熱と加速過程を、テスト粒子シミュレーションにより調べています。電磁場の影響のもとに粒子の軌道を計算し、エネルギー拡散係数、ピッチ角拡散係数などのマクロ統計量を評価します。議論しているのは、主に以下の3点です。

(1)磁気流体波動のもとでの荷電粒子の運動の統計は準線型理論によりほぼ記述されますが、ここには波動の振幅が十分小さいという前提がはいっています。ここでは大振幅の磁気流体波動のなかで荷電粒子の運動を数値的に求め、得られる拡散係数と準線型理論から推定される値との差を評価し、捕捉共鳴領域の重なりによって拡散率のアノマリーを議論しています。

(2)異なる波数を持つ波の間の位相の相関をパラメータとして与え、テスト粒子法を用いて粒子軌道を計算します。アルフヴェン波のパワースペクトルはパワーロー型で与え、同じパワースペクトルを与えたうえで、異なる位相の相関を持たせた2つの場合を考えます。位相関係がランダムな場合は実空間で波形はランダムとなり、位相がそろった場合はソリトン的波形となります。決定されたそれぞれの場の中で粒子軌道を追跡し、エネルギー拡散係数(加速・加熱効率)を求め、位相相関の影響を調べています。位相が揃うとミラー反射によるフェルミ加速により、拡散効率が上昇することがわかっています。

(3)シミュレーション系にMHD波動を導入する際、初期にある波動の電磁場の振幅を与える、つまり振幅に鋭いたちあがりを与えることは、高調波の周波数モードを多く与えていることに対応します。電磁場の立ち上がりに十分な時間をとることで波を断熱的に導入し、さらにシミュレーション時間の終わりでも波を静かに断熱的に減衰させて、非断熱的な場合との粒子統計の差異を議論しています。



位相の揃ったMHD波動により荷電粒子が拡散される様子を速度空間に図示している。横軸は磁場と平行、縦軸は磁場と垂直方向の粒子速度で、図の中央部からスタートした粒子が、時間の経過とともに波動と衝突を繰り返し、図の外側の領域に向かって移動していく、つまりエネルギーを得ていくことがわかる。



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