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磁気流体衝撃波の大局的構造

 宇宙空間の衝撃波はいわゆる無衝突衝撃波であり、イオンのラーマー半径程度よりも小さな空間的スケールにおいては、流体衝撃波とは著しく異なった様相を呈しています。一方で、それよりも大きな空間的スケールでは、無衝突衝撃波におけるマクロ物理量の遷移は、磁気流体衝撃波の場合と比較的よく一致するように見えますが、これには遠上流と遠下流の境界条件が系の内部状態によらずに決定されるという、定常な衝撃波特有の事情が関与しています。これに対し、例えば定常な磁気再結合過程では、下流の境界条件が一意的には決まらないため、無衝突プラズマ系における結果のマクロ平均が磁気流体系の結果と一致するかどうかは自明ではありません。

 この視点に基づいて、宇宙空間中の衝撃波の大局的構造と安定性を、局所的あるいは非局所的散逸過程を取り入れた磁気流体方程式系の枠組みの中で議論しています。衝撃波の安定性はいわゆる発展性条件と密接に関連しています。これは衝撃波に与えた摂動と衝撃波から伝播し得る波動モードの自由度のマッチングの問題として捉えることができます。1960年代に詳しく議論されたまま殆ど忘れさられていたところが、数年前の中間衝撃波の存在を示すWu等の数値実験に端を発して、ふたたび注目を集めてきています。最近では、散逸を含む系において発展性条件が定性的に異なるものとなるかどうか、また不安定な衝撃波の崩壊過程についてなど、様々な立場から議論が行われています。

 これらの経過をふまえ、MHD衝撃波の安定性、回転不連続面の構造、中間衝撃波と回転不連続面の相互振動、崩壊後の構造を決める物理量などについて議論をすすめています。



図の中央付近に存在する衝撃波に、上流域(左方)よりMHD波動を入射した際の、プラズマ密度の変動を示す。下流域(右方)に生じる擾乱は、スペクトル解析により、幾つかのMHD波動と衝撃波面の表面波に分解できる。



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